令和5年9月県議会定例会知事演述

ページ番号1069248  更新日 令和5年10月24日

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1 はじめに

 本日ここに第2回県議会定例会が開会されるに当たり、今後の県政運営について、私の所信の一端を申し上げます。

 私は、この度知事に当選し、県民の皆様から改めて信託をいただきました。これまでの県政の中で、初めて、5期目となる知事を選ぶという県民の皆様の決断には、特別な思いがあったものと受け止めています。こうした特別な思いに、ふさわしい仕事をしていかなければならないと感じています。

 県民一人ひとりを大切にし、岩手の未来を切り拓くべく、全身全霊を尽くして参りますので、県議会議員の皆様並びに県民の皆様の御支援と御協力をよろしくお願い申し上げます。

 この度の知事選挙では、「いわて県民計画(2019〜2028)」の基本目標である「東日本大震災津波の経験に基づき、引き続き復興に取り組みながら、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわて」の実現に向けたアクションプランなどへの理解を求めながら、県内全市町村、各地域を回り、多くの県民の皆様と直接お会いし、様々な課題や要望を伺いました。

 沿岸地域では、復興道路や津波防災施設等の整備、まちづくりなどが進んだ一方、震災から12年経った今でもなお被災地が抱える様々な課題への認識を新たにしたところです。

 改めて、東日本大震災津波の犠牲になられた方々への哀悼の誠を捧げます。

2 岩手は今

 本県ではこれまで、東日本大震災津波からの復旧・復興に向け、県民一丸となり、最優先で取り組んで参りました。

 発災からこれまでの間、復興道路・支援道路・関連道路が完成し、県土の縦軸、横軸を構成する新たな道路ネットワークができました。

 防潮堤などの津波防災施設も整備が進み、その多くが完成しました。

 一方、被災者一人ひとりの状況に応じたきめ細かい支援やなりわいの再生に、中長期的に取り組んでいく必要があります。

 知事就任以来、東日本大震災津波のほか、地震や台風、大雨、大雪等の自然災害など、過去に例のないような危機に相次いで見舞われましたが、その度に県民の皆様と力を合わせ、乗り越えて参りました。

 平成28年台風第10号、令和元年台風第19号では、東日本大震災津波の被災地も含め、大きな被害がありましたが、本年3月までに、全ての災害復旧工事が完了し、改良・改修による防災・減災対策に移行するなど、復旧・復興が進みました。

 本年6月には、天皇皇后両陛下の御臨席を仰ぎ、高田松原津波復興祈念公園において、第73回全国植樹祭を開催しました。

 天皇陛下からは「震災を乗り越えて全国植樹祭が開催されることは誠に意義深く、復興に向けた地域の人々のこれまでのたゆみない努力と大会関係者の尽力に深く敬意を表します」との御言葉を賜り、国内外に復興の姿を発信することができました。

 現在、令和元年度を初年度とする「いわて県民計画(2019~2028)」に基づき、幸福をキーワードに、人々の暮らしや仕事を起点に、県民一人ひとりに寄り添う施策を展開しているところです。

 自動車や半導体関連産業を中心とした産業集積が着実に進んでおり、県内経済における大きなけん引役となっています。

 令和4年就業構造基本調査に基づいて試算すると、本県の10代後半の正社員の年収中央値は、全国の中央値を上回る水準となっています。

 さらに、ITや医療機器等の関連産業の集積も進み、イノベーションの創出に向けた連携も進んでいます。

 先日公表した県の令和5年度地価調査結果では、住宅地で23年ぶりに上昇となったほか、工業地では5年連続で上昇し、上昇率は前年度に比べ拡大、商業地では下落となったものの近年で最小の下落率となっており、経済活力を示すバロメーターとも言われる地価に明るい兆しが見られます。

 一方、現在のエネルギー・物価高騰は、県内のあらゆる産業に大きな影響を与えています。特に、農林漁業者は、厳しい経営環境におかれている状況にあります。これらに加え、中小企業者等では、いわゆるゼロゼロ融資の返済や人材確保などの課題、水産業では、ALPS処理水の海洋放出に伴う中国の水産物の輸入停止の影響もあります。

 また、水産業では、主要魚種の不漁という課題もありますが、関係団体と連携した水産業リボーン宣言に基づく取組を進めることにより、危機を乗り越えようとしています。

 こうした産業毎の個別課題に対する取組を進めつつ、物価高騰など各産業に共通する課題を解決することが必要です。

 新型コロナウイルス感染症については、人口10万人当たりの新規感染者数を全国で最低水準に抑えつつ、社会経済活動との両立を図ってきた中、本年5月に、5類感染症に移行しました。

 これに伴い、人の移動が増加したこと等により、1定点医療機関での1週間当たりの患者数が増加しましたが、病床の確保を図っており、医療提供体制のひっ迫には至っておらず、社会経済活動は回復基調にあります。

 本年4月には、PFI方式により、全国で初めて県と市が共同で整備したスポーツ施設である「いわて盛岡ボールパーク」がオープンしました。

 このボールパークが、大谷翔平選手、菊池雄星選手、佐々木朗希選手のように、将来、全国や世界に羽ばたく人材をエンパワーすることが期待されます。

 本年5月には、いわて花巻空港と台湾を結ぶ国際定期便が再開し、8月に寄港した「MSCベリッシマ」をはじめとして、多くのクルーズ船が県内に寄港するなど、県内の観光客数はコロナ禍前の水準に回復しつつあります。

 ニューヨーク・タイムズ紙の「2023年に行くべき52か所」への掲載や、大谷翔平選手をはじめとする若者の活躍など、岩手に関する情報が、いまだかつてないほど世界に拡散されています。

 このように「地方」の魅力が見直される中、本年7月には、日本外国特派員協会における記者会見で、岩手を例に、地方の持つ良さを発信したところであり、岩手から全国や世界への更なる発信が期待されています。

3 今後4年間の県政運営の基本的な考え方

・希望郷いわて、その先へ「いわて県民計画(2019~2028)」の推進

 これまでの成果を土台とし、今任期では、「いわて県民計画(2019〜2028)」のもと、これまで以上に、県民一人ひとりを起点とし、県民とともに歩む施策を展開し、岩手が、全ての岩手県民と岩手に関わる人々を幸福にできる県になることを目指します。

 まず、4年間の県政運営の基本的な考え方について申し上げます。 

 今任期の4年間は、今年度を初年度とする第2期アクションプランの計画期間と重なります。

 第2期政策推進プランでは、人口減少対策に最優先で取り組むこととしており、 4つの重点事項として、「自然減・社会減対策」、「GX、グリーン・トランスフォーメーションの推進」、「DX、デジタル・トランスフォーメーションの推進」、そして、「安全・安心な地域づくり」を掲げています。

 今後4年間は、第2期アクションプランを着実に推進し、オール岩手で、人口減少問題に取り組み、さらに、必要な追加的施策を推進することによって「希望郷いわて」をその先に進めます。

 

・東日本大震災津波からの復旧・復興の推進

 東日本大震災津波から12年余りが経過しました。この12年間で、計画されたハード事業の多くが完了しましたが、残された社会資本を早期に整備します。

 被災者のこころのケアやコミュニティの形成支援など、一人ひとりの状況に応じたきめ細かい支援に、引き続き取り組みます。

 被災地では、市町村や関係団体、民間事業者との協働により、なりわいの再生が進められてきました。

 主要魚種の不漁、エネルギーや資材の高騰、中国による水産物の輸入停止への対策など、復興を支える水産業の再生や、三陸復興国立公園、みちのく潮風トレイル、三陸ジオパークなどの地域の魅力を生かした観光振興の促進に取り組みます。

 新たに整備された道路ネットワーク等を活用し、更に民間の力を呼び込み、地域社会全体の活性化につなげていきます。

 「東日本大震災津波を語り継ぐ日条例」の趣旨にのっとり、震災の事実・教訓の伝承と、復興の姿の発信に取り組みます。

 新しい三陸の創造を目指し、復興のその先を見据えた取組を進めていきます。

 

・ILCの実現

 ILCは、その学術的な意義に加え、誘致により、イノベーションの創出、交流人口の拡大など、多様な価値を生み出すものと期待されています。

 県では、県内外の関係団体等と連携した国等への要望や国民的な機運醸成とともに、実現を見据えた受入準備、関連産業の振興、人材育成等を積極的かつ戦略的に推進してきました。

 こうした中、今年度の国の予算では、前年度比で倍増となる関連予算が措置され、技術開発を推進する国際的な枠組み「ILCテクノロジーネットワーク」が発足するなど、新たな取組が進められています。

 引き続き、国内外の研究者をはじめとした多様な関係者と緊密に連携しながら、ILCの実現に向けて全力で取り組んで参ります。

 

・4広域振興圏、県北・沿岸圏域等の振興

 持続可能な地域社会を築くためには、三陸地域の「日本ジオパーク」認定に代表されるように、優れた地域資源を生かし、地域住民との協働や関係市町村と連携した広域的な地域づくりを更に広め、県央、県南、沿岸、県北の4広域振興圏の振興を一層進めることが重要です。

 特に、高齢化・人口減少が進行している県北・沿岸圏域においては、地域の産業を担う人材の育成、在宅医療やリハビリテーション医療の充実を図ります。

 三陸地域の魅力を高めるため、「日本ジオパーク」への確実な再認定に加え、地域密着型のまちづくりを進めるなど、持続可能な地域社会の基盤となる施策を講じて参ります。

 さらに、広域振興圏や県の区域を越えた広域的な連携を進め、「北上川流域」や「三陸」、県北圏域をはじめとする「北いわて」などの地域について、産業集積や自然環境、交通ネットワーク、世界遺産など、地域の強み・特徴や、イノベーションの力を生かして、それぞれのゾーンの特徴に応じた産業振興と地域課題の解決に取り組みます。

 また、人口規模が小さい町村を中心に、交流人口の拡大などに向けた支援を重点的に行います。こうした支援とともに、市町村相互や県・市町村との連携・協働を一層進め、広域振興局を拠点とした一体感あるふるさと振興を推進します。

 

・行政経営

 直面する行政課題や複雑化する県民ニーズに的確に対応し、政策の実効性を高めていくためには、県民、企業、大学、NPO、関係団体、市町村など、あらゆる主体と連携・協働しながら、より質の高い行政経営を進める必要があります。

 これらの主体の県政への参画を促進するため、多様な県民運動のネットワーク化により、県民総参加の政策を進めます。

 また、いわて未来づくり機構に代表される産学官ネットワークや、岩手県立大学などの高等教育機関と連携し、高度専門的な知見を活用した地域課題の解決や新たな付加価値の創出に取り組みます。

 職員はもとより、就職を希望する方にとって魅力ある働く場にするため、超過勤務の縮減や男性職員の育児休業等取得率100%達成、デジタル技術の導入拡大による業務の効率化など、一層の働き方改革を進めます。

 多くの公共施設等の老朽化が進む中、将来にわたり、行政サービスの提供を持続可能なものとするため、県庁舎をはじめとする公共施設の計画的な更新や長寿命化、施設配置の最適化を進めます。更新等に当たっては、スポーツ医・科学などの新たな機能や、インクルーシブなどの新たな視点を取り入れていきます。

 人口減少対策や社会資本整備など必要な政策を強力に推進するため、収支均衡予算の実現やプライマリーバランスの黒字維持など、4つの財政目標達成による健全な財政基盤を確保しながら、新たな歳入確保策の検討も進めます。

4 「いわて県民計画(2019〜2028)」第2期アクションプランの着実な推進

 このような考え方に基づき、「いわて県民計画(2019〜2028)」を推進する今後4年間の主要な施策について申し上げます。

 

・物価高騰等喫緊の課題への対応

 まず、今後4年間の主要な施策を進めるに当たり、現下の危機であるエネルギー・物価高騰対策に取り組みます。

 エネルギーや原材料、資材等、物価の高騰に対し、県はこれまで、生活困窮者や子育て世帯、中小企業者、農林漁業者等への幅広い支援を実施しましたが、現在も県民生活や地域経済に大きな影響を及ぼしています。

 これまで措置した施策を迅速かつ確実に実施しながら、県民一人ひとりの暮らし・仕事・学びに寄り添った施策を機動的に行って参ります。

 また、全国知事会等と連携し国に対策を働きかけるほか、中小企業者や農林漁業者等の支援に向け、「買うなら岩手のもの運動」などを通じた消費拡大や販路開拓、経営の安定化などを推進します。

 

・人口減少社会への対応(自然減・社会減対策の推進)

 現下の危機に対する適時適切な対策とともに、4つの重点事項をオール岩手で進めて参ります。

 まず、1つ目は、人口の「自然減・社会減対策の推進」です。

人口減少は、未婚化・晩婚化や、仕事と子育ての両立の困難さなどによる出生数の減少と、若年層を中心とした転出超過が大きな要因となっています。

 この背景にある一人ひとりの「生きにくさ」を「生きやすさ」に変え、全ての岩手県民と岩手に関わる人々が、岩手県をベースに、自由に自己実現ができ、年齢や性別、障がいの有無に関わらず、希望をかなえられる岩手を創っていくため、個人の希望に基づく自由な生き方の選択を応援することが重要です。

 このため、進学、就職などをずっと岩手で過ごす「岩手で学び、岩手で暮らす」こと、県外の大学等へ進学し、卒業後に岩手に戻って就職する「県外で学び、岩手で暮らす」こと、進学や就職を機に県外へ行き、仕事等を通して力を身につけた後、岩手に戻って就職したり新しい事業に挑戦する「県外で身につけた力を岩手で発揮する」こと、進学や就職を機に県外へ行き、県外で暮らしながらも故郷である岩手とつながり続ける「県外で暮らし、岩手とつながる」こと、県外に住んでいる人が、岩手の魅力に気付き、県外から移住するなどの「県外出身でも岩手で暮らす」こと、それぞれの生き方の選択を尊重しながら、多様なライフステージに応じた支援を強化していきます。

 子育て支援については、今年度からスタートした3歳未満の第2子以降の保育料無償化など、全国トップクラスの施策を一層拡充します。

 放課後児童クラブや放課後子供教室の充実など、子どもの居場所・遊び場づくりを進めます。

 子どもの教育については、自己実現に向け、知・徳・体のバランスのとれた「生きる力」を身につける学びの場の確保や学力育成の取組、ICTの効果的活用を推進します。

 復興教育やSTEAM教育、スーパーキッズの発掘・育成などを推進します。

 いじめや不登校の対策を講じ、一人ひとりがお互いに尊重できる教育の場を整えます。

 県内で就業を希望する全ての若者・女性の就職が実現できるよう、県内企業の働き方改革や子育て支援、若者・女性が働きやすく活躍できる環境づくりを促進します。

 岩手で働く魅力・価値や県内の企業に関する情報を発信し、U・Iターンを促進します。

 ワーケーション、二地域居住、農山漁村体験、いわて留学など関係人口の拡大を図り、将来の移住・定住につなげていきます。

 3つの世界遺産や2つの国立公園等の地域資源を生かした県内全域の周遊など、より広域的な観光の振興を進め、交流人口を拡大します。

 個人の自由を尊重する社会の創出に向け、パートナーシップ制度への支援や結婚支援施策の拡充を進めます。

 

・人口減少社会への対応(GXの推進)

 2つ目は、GX、グリーン・トランスフォーメーションの推進です。

 国内外で、気候変動が一因と考えられる異常気象が頻発しており、地球温暖化対策は喫緊の課題です。

 豊富な森林資源や再生可能エネルギーのポテンシャルなど、本県の強みを生かし、地域経済と環境に好循環をもたらす持続可能な新しい成長と、誰もが住みたいと思えるふるさとを次世代に引き継ぐことが必要です。

 岩手県の温室効果ガスの排出について、2030年度までに、2013年度と比べ57%削減する目標の達成に向け、県民の理解増進を図ります。

 また、県が先頭に立って取組を進めることも必要であり、県有施設のZEB化や太陽光発電、LED照明、EVの導入等を進め、温室効果ガスの排出量を削減します。

 本年7月、全国の自治体で初めて発行したグリーン/ブルーボンドについて、継続的な発行により財源の確保を図り、気候変動への対応や海洋資源・生態系の保全等に資する事業を推進します。

 産業・業務活動における省エネルギー対策に向け、県内企業の脱炭素経営を支援します。

 地域と共生した再生可能エネルギーの導入促進や、自立・分散型のエネルギー供給体制の構築により、エネルギーの地産地消を進めます。

 環境負荷を低減する農業生産の推進や、地球温暖化に適応する品種の開発を進めます。

 二酸化炭素の森林吸収源対策に向け、豊富な森林資源を活用した林業の振興に取り組みます。

 ブルーカーボンの増大に貢献する藻場の再生・造成などに取り組みます。

 三陸沖における洋上風力発電の導入など、再生可能エネルギーの導入拡大を推進します。

 

・人口減少社会への対応(DXの推進)

 3つ目は、DX、デジタル・トランスフォーメーションの推進です。

 DXの進展は、生産性の向上や新たな価値の提供を実現させ、人口減少など地域が抱える社会問題の解決を図り、個性豊かで活力に満ちた地域社会の可能性を広げます。

 あらゆる産業のDXを促進し、介護・子育て・医療分野における利便性の向上、教育分野における新たな学びの実現を図ることで、全ての県民がデジタル化の恩恵を享受できる持続可能な地域づくりが必要です。

 スマート技術を活用した農林水産業の生産性向上、EC、電子商取引を活用した農林水産物の販路拡大、デジタル技術を活用した歴史・文化情報の発信による交流人口の拡大など、産業のDXを進めます。

 大規模災害時の避難誘導や捜索活動、小規模集落への物流などにおけるドローン活用、MaaS等による利便性の向上、AIを活用したデマンド交通等の促進を通じて、社会・暮らしのDXを進めます。 

 

・人口減少社会への対応(安全・安心な地域づくりの推進)

 4つ目は、安全・安心な地域づくりの推進です。

 東日本大震災津波や新型コロナウイルス感染症の経験を教訓とし、気候変動が一因とされる異常気象や、「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震」をはじめとした大規模自然災害、新たな感染症などに備えていく必要があります。

 また、こうした大規模自然災害など、新たな危機への対策強化に向け、災害時の体制整備や防災を担う人材育成が重要です。

 激甚化・頻発化する自然災害等に備え、県と市町村が一体となった自助・共助・公助による防災・減災対策を進めます。

 「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震」へ備えるため、本年8月に県と沿岸12市町村が共同で取りまとめた報告書に基づき、県と沿岸市町村が一体となって犠牲者ゼロを目指した取組を推進します。

 県民の生命や財産を守るため、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」等による流域治水などに取り組みます。また、災害に強く、物流の基盤となる道路ネットワークの構築に向け、沿岸と内陸を結び、高規格道路を補完する緊急輸送道路としての役割を担う路線の整備に取り組み、岩手の強靱化を推進します。

 橋梁等の道路施設や河川・海岸施設等の社会資本について、予防保全型維持管理を進めます。

 新たな感染症の流行時にあっても、企業活動を停滞させることがないよう県内企業の業務継続計画の策定を促進します。

 

・他の主要な施策の推進

 医療・介護・福祉、地域公共交通、産業・雇用環境等については、人口減少社会において、引き続き、中長期的に維持・向上を図っていく基盤であり、4つの重点事項と合わせ、施策を推進します。

 特に、持続可能で希望ある医療体制の構築に向け、周産期医療やがん・脳血管疾患などについて、全県的な医療提供体制と県立病院の体制等の一層の充実を図ります。

 また、国が責任をもって地域医療を守ること等を定めた「地域医療基本法」の制定を働きかけます。

 併せて、12の医師少数県で構成する「地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会」会長として、実効性のある医師不足、医師偏在対策の実現を目指します。

 多様化・複雑化する県民ニーズに対応するため、福祉総合相談センターと県民生活センターの合築により、相談支援をはじめとする公的福祉の拠点を整備します。

 地域にとって必要なバス路線やJRローカル線に係る課題等に対応するため、財政的支援や必要な情報の開示など、国に対し積極的な関与を求めます。

 県内を網羅した持続可能な地域交通の確保に向け、市町村や鉄道、バス・タクシー事業者と連携し、対策を講じます。

 県内産業の持続的な発展に向けては、採用や賃上げ、働き方の改革、生産性向上に向けた設備の整備など、中小企業への支援を拡充します。

 今年度設立した「いわてスタートアップ推進プラットフォーム」等により、若者の起業、スタートアップ支援の取組を強化し、本県を舞台に、若者や女性が、様々なビジネスや社会活動の分野で、それぞれの思いやアイデアを形に変えていく環境を構築します。

 市場・地域の特性を捉えた戦略的なプロモーションを展開し、インバウンドをはじめとした誘客拡大を促進します。

 農業については、県オリジナル水稲品種を核とした県産米の良食味・高品質生産、高収益な園芸作物の導入、畜産経営体の規模拡大を推進します。

 食料安全保障の重要性が高まる中、我が国の食料供給基地としての役割を果たしていくため、海外依存度の高い麦・大豆等の生産拡大や農業生産基盤の着実な整備等を進めます。

 野生鳥獣被害の防止に向けた有害捕獲など、地域全体で取り組む被害防止活動等を推進します。

 農林水産物をはじめとする県産品の販路拡大に向けて、関係団体と連携したトップセールスにより、アジアや北米等をターゲットに戦略的な輸出促進を図ります。

5 むすび

 岩手県政150年の歴史の中で、初めて政党政治を実現した平民宰相、原敬や、外務大臣や内務大臣、東京市長を歴任し、関東大震災の復興に手腕を発揮した後藤新平、国際連盟事務次長として活躍し、日本と西洋のかけはしとなった新渡戸稲造をはじめ、岩手は、全国や世界を舞台に活躍する多くの偉大な先人を輩出してきました。

 そして近年も、大谷翔平選手や小林陵侑選手、本県出身力士として23年ぶりに小結となった錦木関など、全国や世界を舞台に活躍する多くのスポーツ選手や、本県初のプロ棋士となった小山怜央棋士など、若者の目覚ましい活躍は、私たち岩手県民を元気づけ、感動を与えてくれています。

 また、今年1月には、ニューヨーク・タイムズ紙が「2023年に行くべき52か所」の2番目に盛岡を選び、世界から岩手が注目されています。

 私はこれまでも、岩手で生まれ育った人や、岩手で育まれた豊かな文化に大きな可能性を感じていましたが、今、全国や世界で活躍する多くの岩手県人や、世界から注目される岩手を目の当たりにし、改めて、ふるさと岩手の価値や魅力が国際的に広く認知されるようになったことをうれしく思います。

 高速交通網や情報通信技術が発達した今、岩手にいても、世界を相手に仕事をして暮らすことができます。

 岩手の外に羽ばたいても、岩手とつながりながら、全国や世界で活躍することができます。

 また、ハロウインターナショナルスクールのように、世界から岩手にやってきて、世界へ羽ばたくこともできます。

 岩手の魅力にひかれた世界中の多くの人々が、岩手とつながり、岩手を訪れています。岩手の県土には、人を育て、生かす風土があり、大きなポテンシャルがあるのではないでしょうか。

 ニューヨーク・タイムズ紙の盛岡の記事は、景観だけではなく、住民や生活文化の豊かさを高く評価し、世界に紹介していますが、これは、盛岡に限ったことではなく、岩手全体にも当てはまることです。

 放送から10周年になる「あまちゃん」でも、北限の海女やまめぶ、琥珀など、地域の魅力が発掘・再評価されました。

 岩手の自然、岩手の日常、岩手の人々の価値や魅力は、岩手の中にいれば気づかなくても、外からみればかけがえのない素晴らしいものであるということが、交通や情報通信の発達によって、広く知られ、地元にもフィードバックしているのです。

 今こそ、これらの価値や魅力を発信し、岩手を世界に大きく開き、全国や海外の人を招き入れていきましょう。

 それは、県民一人ひとりが、仕事や生活、学びを通じて、岩手をベースに幸福度を高めるための大きな力となります。

 これからの4年間は、岩手の価値や魅力を全国、海外の人と共有するため、世界に打って出るときです。

 岩手の持つ価値や魅力を最大限に磨き上げ、誇りをもって世界に発信し、「希望郷いわて」のその先にある、まだ見たことのない景色に向かって歩みを進めましょう。

 ここにおられる議員の皆様並びに県民の皆様の深い御理解と更なる御協力を心からお願い申し上げ、私の所信表明を終わります。

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令和5年9月県議会定例会知事演述全文

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