平成23年度 児童虐待による死亡事例検証報告書
概要
県内で児童虐待による死亡事例が発生したことから、県社会福祉審議会児童福祉専門分科会措置部会(外部有識者6名)において、平成24年1月まで4回にわたり検証委員会を開催し、関係機関のヒアリング等を行いながら、児童虐待の未然防止に向けた対応策について、報告書にまとめたものである。
1.事例の概要
母が自宅で、生後2か月の二女B子の頭部を平手で数回殴り、頭蓋骨骨折や硬膜下血腫のけがを負わせ、「外傷性脳障害」で死亡させた。
母は当初、殺人容疑で逮捕されたが、「証拠上、殺意を立証するところまで至らない」として傷害致死の罪に切り替え、地方裁判所に起訴された。
2.事例発生当時の家族状況
母、長女A子及び二女B子は、本事例の発生当時、C市内の母方祖父母宅に在住していた。なお、父は離婚後、母からの連絡に応じて、母方祖父母宅を訪ねる状況であった(本事例の発生当時は、D市内の父方祖父母宅に在住していた)。
3.課題及び問題点
次の視点から、事例の課題及び問題点を検討した。
【視点1】「子どもの安全の確保について」
専門家による対応を行わなかったこと、二女B子の出生前からの対応が不足していたこと、母がEPDS(エジンバラ産後うつ質問票)で高得点であり、産後うつの傾向があったにも関わらず早期に対応できなかったこと等を挙げた。
【視点2】「関係機関の連携について」
関係機関の役割分担が明確でなかったこと、母との接触が十分でなかったこと等を挙げた。
【視点3】「関係機関の訪問、相談支援のあり方について」
母が拒否的であったことによる関わりの難しさ、祖父母からの支援がある中での介入の難しさから、関係機関の関わりが不十分であったこと等を挙げた。
その他、【視点4】「父母と祖父母の関係について」、【視点5】「関係機関と民生児童委員等との連携について」、【視点6】「児童虐待の予防的取り組みについて」の視点から検討した。
4.再発防止に向けた取組の提言
上記の課題及び問題点を踏まえ、次のとおり再発防止に向けた取組の提言を行った。
【提言1】「子どもの安全確保を優先する仕組みづくり」
母がEPDSで高得点であった等、精神疾患が疑われる場合においては、主治医や専門医(精神科医等)等の意見を参考にしながら、速やかに適切なアセスメントを行い、職権による一時保護の検討を行うこと等、3つの方策を提言した。
【提言2】「関係機関の連携と役割の明確化」
市町村要保護児童対策地域協議会で情報共有を行い、ハイリスク家庭への対応策や関係機関の連携体制の確認を行う等、今後、同協議会の充実を図るとともに、関係機関の役割分担を明確にすること等、3つの方策を提言した。
【提言3】「関係機関の相談・支援体制の整備」
ハイリスク家庭への支援は、家庭訪問を拒否されることや対応が難しいことが多いことから、福祉及び保健関係職員の資質向上のための研修が必要であること等、5つの方策を提言した。
その他、【提言4】「育児の孤立化の防止」、【提言5】「地域との連携及び地域における取組」、
【提言6】「虐待予防の意識啓発」の視点から再発防止に向けた取組を提言した。
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