馬パラチフスの防疫措置

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ページ番号1008006  更新日 平成31年2月20日

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多くの馬の飼養環境には馬パラチフスの起因菌Salmonella Abortusequiを含む多種類のサルモネラ菌が存在し、少数ながら臨床症状を示すことなく同菌を保有する保菌馬も混在する。したがって、馬の飼養環境から同菌や保菌馬を完全に除去することは困難であり、本病の予防には、同菌による汚染の程度を最小限に留めるための対策を多方面から進める必要がある。すなわち、

  1. 発生時における的確な診断と防疫措置
  2. 通常時における厩舎の定期的な消毒等の一般的な衛生対策
  3. 催し物等に参加させる際に推奨される飼養管理

をそれぞれ徹底することが求められる。

発生農場における初動防疫

流産が発生した際は、本病を疑い、当該馬房専用の履き物、作業着、手袋等を用意、着用して流産馬を隔離する。また、流産胎子と胎膜が他の馬に触れないようにビニール袋等に容れ、獣医師等に連絡して指示を受ける。

  1. 流産馬を早期に隔離する。
  2. 多量の起因菌を含む流産胎子と胎膜を検査機関に搬送または焼却等により処分する。
  3. 悪露も多量の起因菌により汚染されていることから、流産馬の膣周囲を十分量の消毒薬で洗浄する。
  4. 流産馬への治療を控え、自然回復を待つ。ただし、臨床症状が重篤な馬には、テトラサイクリン、アミノ配糖体系抗生物質を子宮内に投与する。流産馬への抗生物質投与は、症状の回復遅延や保菌馬となる確率を高める可能性のあることが指摘されている。
  5. 馬房、管理器具を十分に消毒する。
  6. 厩舎全体を消毒する。
  7. 当該隔離房前に踏み込み消毒槽を設置し、専用の作業着、手袋、履き物を用意し、その着用を励行する。当該馬の飼養管理は他馬の管理後に行う。

発生農場における保菌馬の摘発と淘汰

保菌馬は重要な感染源であるが、確実な生前診断法はない。保菌が疑われる以下の馬を順次淘汰する。

  1. 流産馬および同居馬の血清凝集反応検査を定期的に行い、抗体価が再上昇したり、長期間にわたり低下しない場合は、保菌馬として疑い、淘汰または隔離飼養を継続しながら抗生物質による治療を試みる。
  2. 成馬と比較して、当歳馬は保菌馬になり易いことから、隔離飼養を継続し、繁殖馬への供用を控える。

周辺農場における対策

本病による流産発生の数週間後に、周辺農場で流産が発生することがある。これは発生農場から野生の鳥獣や人を介して周辺農場に伝播した結果と推察されている。周辺農場では、以下の一般的な衛生対策の再確認と徹底が必要である。

  1. 厩舎の入り口に踏み込み消毒槽(消毒薬を2、3日間隔で交換する)を設置し、専用の作業着、手袋、履き物を用意し、それらの活用・着用を励行する。
  2. 厩舎周辺を整理、清掃し、厩舎内外への鳥獣の飛来・近接を防ぐ。
  3. 厩舎を定期的に消毒する。

馬が集合する催し物に参加する農場の対策

  1. 開催前後に馬にストレスを与える下記の飼養管理等を避けるよう努める。
    • 長距離輸送
    • 駆虫剤・抗生物質(とくにペニシリンG)の投与
    • 給与飼料の種類や量の変更
  2. 開催後に、参加した際に用いた管理器具、手袋、作業着を消毒し、馬体も洗浄または清拭する。
  3. 開催前に馬の集合場所(飲水場を含む)を塩素剤等で消毒する。

(病性鑑定課)

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岩手県中央家畜保健衛生所 病性鑑定課
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