ロドコッカス・エクイ感染症

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ページ番号1008008  更新日 平成31年2月20日

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本症は子馬の肺炎、腸炎、関節炎などを主徴とする細菌感染症であり、わが国を含む全世界の子馬生産地で発生しています。発生例の多くは散発性ですが、しばしば地方病性に発生(特定の地域において多発)します。国内では、毎年数十頭が本症に罹患し、経済的にも重要視されています。ここでは、本症の特徴や予防対策について概説し、県内発生事例の検査成績について紹介します。

ロドコッカス・エクイ感染症

病原体と宿主

Rhodococcus equiの感染による。本菌はグラム陽性、無芽胞性、非運動性の球桿菌で、従来コリネバクテリウム・エクイ(Corynebacterium equi)と呼ばれていた。子馬に化膿性肺炎を起こす強毒株と病原性を欠く無毒株が存在し、前者は病原性プラスミドを保有し、毒力関連抗原(VapA)を発現する。VapAは食細胞内での殺菌抵抗性に関与し、細胞内寄生性に関与している。
強毒株の本菌は馬の飼育環境の土壌中に生息し、条件が揃えば土壌中でも増殖する。強毒株に感染した子馬では、気管分泌液由来の菌が腸管内で増殖し、糞便中に多量の菌が排泄される。強毒株に汚染された地域では、子馬と土壌間で感染環が成立し、本病が継続的に発生する。

感染と発病

感染経路は気道、経口、外傷であり、保菌母馬では子宮内感染も成立する。罹患馬は39度から40度の発熱、発咳、水様性ないし膿性鼻漏、呼吸促迫、下痢を示すが、大多数は明確な呼吸器症状や下痢症状を示さない。急性例は数日後に死亡するが、慢性例は四肢の関節炎を併発する。

対策

感染源は汚染された飼育環境と感染子馬の糞便であり、汚染環境(厩舎、敷き料、パドック)の消毒が重要である。厩舎は糞便や敷料を除去して水洗後、逆性石鹸や生石灰を用いて消毒する。汚染土壌は表土を除去して客土するような土壌中の菌数を低減させる対応が有効である。
子馬の臨床観察と検温を強化し、発熱馬の早期発見と治療に努めることも本病の拡大防止に重要である。

治療

早期に診断された個体ではゲンタマイシンとセファロチンの併用が効果的である。病勢が経過して膿瘍が形成された個体では、細胞内寄生菌に薬効の高いリファンピシンとエリスロマイシンの併用が推奨されるが、長期間の投与が求められ、時に致死的な腸炎を誘発することから一般的には用いられない。リファンピシンの単独投与は耐性菌の出現を誘発することから避けることが望ましい。

県内発生事例

牝馬1頭、雌馬8頭、子馬3頭、ポニー4頭の計16頭を飼養する農場で、平成21年7月7日に出生した1頭が出生直後から発熱(41度)を継続し、抗生剤治療により症状が改善しなかった。7月下旬に下痢、8月に両側の飛節内腫を併発し、9月18日に死亡した。
病理検査により、化膿性肉芽腫性気管支肺炎、潰瘍性盲結腸炎が観察された。細菌検査により、肺および気管気管支リンパ節からRhodococcus equiが分離され、分離株は強毒株遺伝子を保有していた。得られた成績から、ロドコッカス・エクイ感染症と診断した。

(病性鑑定課)

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