「いわて幸せ作戦会議(in陸前高田)」(令和3年7月9日)
日時
令和3年7月9日(金曜日)10時30分から11時50分まで
場所
陸前高田市コミュニティホール 2階 大会議室
出席者
・参加者(敬称略)
種坂 奈保子(陸前高田ほんまる株式会社 デザイナー)
松田 俊一(マツダファーム)
中野 貴之(一般社団法人大船渡市観光物産協会)
佐藤 瑠奈(株式会社地域活性化総合研究所 地域コンサルタント)
菊池 顕(合同会社HUB 代表)
・県側
知事、沿岸広域振興局副局長、政策企画部長
開会
石川部長
ただいまから、県政懇談会「いわて幸せ作戦会議in陸前高田」を開催いたします。
皆様には御多忙のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
本日は、「気仙地域の特性を生かしたなりわいの再生」を懇談テーマとし、気仙地域でお仕事や地域活動など様々な分野で地域の復興に向けて取り組まれている方々にお集りいただいております。
私は、本日の進行役を務めさせていただきます岩手県政策企画部長の石川と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
知事あいさつ
石川部長
それでは、開会に当たりまして、知事から御挨拶を申し上げます。
達増知事
皆さん、おはようございます。せっかくパーティションがあるので、その中からしゃべりますけれども、県政懇談会「いわて幸せ作戦会議in陸前高田」ということで、県政懇談会というのは昔からある事業ではありますが、「いわて幸せ作戦会議」という名前は、今の県の総合計画「いわて県民計画(2019~2028)」、これが2019年から始まっておりまして、その基本目標「東日本大震災津波の経験に基づき、引き続き復興に取り組みながら、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわて」にちなんで、「いわて幸せ作戦会議」という名前にしています。
東日本大震災津波からの復興が進み、そして、その復興の成果も生かしながら新しい地域づくりを進めていくという今の岩手県でありますが、そこに新型コロナウイルス感染症の流行が来て、感染対策をしっかりやっていかなければならないんですけれども、ただ、この新型コロナウイルス感染症の流行で改めて、大都会のリスクの高さ、地方のリスクの低さ、働いたり暮らしたりする場所として、やはり、地方というのは実は本当はすごくいいんじゃないかというような視点も出てきている今日この頃でありまして、そのような中で、それぞれのこの地域、また、それぞれの分野で活躍している皆さんの生の声を県政に反映させようという趣旨であります。
地元選出の県議会議員の皆さんにもおいでいただきまして、誠にありがとうございます。
どうぞよろしくお願いいたします。
出席者紹介
石川部長
それでは、この後の進め方についてでございます。まず私からおひとりずつ御出席の皆様を御紹介しますので、皆様から1分程度で簡単な自己紹介をお願いいたします。その後、本日のテーマに沿ってお話をいただきますが、お一人ずつお話が終わった都度、知事がコメントという形で進めていきたいと思います。そして、最後に自由懇談の時間を設けたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。
それでは、座席表に従い、時計回りで本日御出席の皆様を御紹介いたします。陸前高田ほんまる株式会社デザイナー、種坂奈保子さんです。
種坂 奈保子
どこを向いてしゃべっていいいのか難しいんですけれど、この中でお話します。陸前高田ほんまる株式会社の種坂と申します。
2019年に設立しました、陸前高田市の嵩上げ地を拠点にするまちづくり会社です。震災後に嵩上げした場所にある空き地の利活用や新しい中心市街地の情報発信を行っています。
私個人の自己紹介としては、愛知県出身で、2011年の11月に移住しました。もともと名古屋で店舗のデザインをしていたので、陸前高田に来てから仮設商店街の立ち上げや商業者の方々のサポートをしていて、その関係で新しく中心市街地ができるに当たり、まちづくり会社にお声がけいただいたという形になります。
まちづくり会社ができるまでは、5年間、いわて復興応援隊として活動させていただいていました。応援隊は素晴らしい制度で、現地で活動しやすいように、手厚いサポートをいろいろ県の皆さんにもしていただいたので、「その節はありがとうございました」という気持ちを今日も伝えたいなと思って来ました。今日はよろしくお願いします。
石川部長
ありがとうございます。それでは続きまして、マツダファーム、松田俊一さんお願いいたします。
松田 俊一
よろしくお願いいたします。松田俊一、陸前高田市生まれで、Uターンして新規就農しました。
今年でもう8年目になるんですが、自分は、もともと実家が専業農家というわけではなく、自分から新規就農を始めた身でありまして、そこで農業の課題や農業の地域の課題というものをすごく感じた部分がありました。やはり、職として自分が農業を選んだ身ですので、継続して営農していきたいなと思ったときに、労力の問題を解消するためにICTを使い省力化を進めたこともですが、特に、地域の課題として、作るよりも売る方がすごく難しいなと気付きました。
今、自分は家もあって畑もある状況ではあるんですが、最近、陸前高田で新規就農する子たちは、どちらかというと、移住してきて、家もなく畑もない子たちが始めて、というのが結構現状でして、そこで、「何かサポートできることはないかな」とか、あとはやはり、ある程度、生産者から農業経営者に変わらなきゃいけない時期だなというのをすごく強く感じて、そのマインドの共有や情報共有する場を作りたいなということで、「陸前高田食と農の森」という会を立ち上げました。そこで、若者と自分たちの課題であったり地域の課題であったりを解決しよう、そして、会の名前の由来なんですが、ちょっと変わっている名前なんですが、やはり農業者だけでなくて、お客様の口に届くまでも考えて、それを木々に見立てて森としようという話になって、今、活動しております。今日はよろしくお願いいたします。
石川部長
ありがとうございました。続きまして、一般社団法人大船渡市観光物産協会、中野貴之さんです。お願いします。
中野 貴之
よろしくお願いいたします。大船渡市観光物産協会に所属しております中野と申します。
出身は盛岡市で、先ほど、種坂さんからもお話があったとおり、2013年からいわて復興応援隊として、5年間、大船渡市観光物産協会が運営しております碁石海岸インフォメーションセンターに籍を置きまして、ボランティアガイド団体の活動支援や、大船渡市の観光情報の発信などを行っておりました。
今までずっとインフォメーションセンターで働いておりましたので、碁石海岸などの自然の素晴らしさや国立公園の魅力の発信ということで活動してきたんですけれども、今年の6月から、勤務地が碁石海岸インフォメーションセンターから大船渡市観光物産協会の本部に戻って、観光客の誘致促進事業とか宿泊観光回復事業とかの活動を行っておりますけれども、今日の活動発表というところでは、ちょっとそこら辺はまだ始めて1ヶ月程度のところでありますので、今までインフォメーションセンターで活動してきた部分をお話をさせていただければと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
石川部長
ありがとうございます。続きまして、株式会社地域活性化総合研究所地域コンサルタント、佐藤瑠奈さんお願いします。
佐藤 瑠奈
おはようございます。地域活性化総合研究所で働いております佐藤と申します。
こういった場に参加させていただくのは初めてなので、とても緊張しているんですが、私自身、もともと大船渡出身で、一度関東に行ってたんですけれども、Uターンとして戻ってきました。その後、今の会社に就職をして、ITを活用できる人材の育成ですとか、市内の中学生の皆さんに対するキャリア教育に関する事業に携わっております。もともと高校も専門学校も調理系の学校だったので、プログラミングとは全く縁がなかったんですけれども、今もちょっとプログラムを組むことはできないんですけれども、最近は、ノーコードプログラミングという、コーディングしないでアプリとかを作れるツールがたくさんクラウドサービスとして出ているので、そういったサービスを活用して、地域の事業者の皆さんのIT化に携わったりもしています。
昨年度はコロナ禍の中で、大船渡市さんと協力をして、こういったノーコードのツールですとかズームとかのウェブ会議のサービスの活用の仕方を市内の企業の方に教えるという、IT活用塾という取組も行っておりました。今年度に関しては、市内外のIT企業の方と連携をして、小中高生さんを対象としたITユースチームというものを立ち上げようという企画を行っています。本日はよろしくお願いいたします。
石川部長
ありがとうございます。続きまして、合同会社HUB代表、菊池顕さんです。お願いします。
菊池 顕
住田町の合同会社HUBの菊池です。よろしくお願いします。
私はもともと川徳に8年間勤めておりまして、食品のバイヤーですとか、物産展の運営なんかをさせてもらったんですけども、その経験を生かして何か特産品を作れないかなということで、要は、小売業は商品が売れる出口の部分だと思うんですけれど、その製造だとか商品開発だとか、その入口の部分から携わりたいなと思っていたタイミングで、住田町の地域おこし協力隊の応募をたまたま見つけまして、住田町の特産品を作るというお仕事がありましたので、それをやらせていただきました。
その任期中に合同会社HUBを設立して、特産品を販売する会社ですね、その3年間の任期を終えまして、今、その会社で住田町の玄米を使ったシリアルと、あとは今、住田町の町全体で「からあげ大作戦」というものをやっておりまして、住田町の「みちのく清流どり」というブランドの鶏肉があるんですけれども、それを使ったから揚げを使って町全体でまちおこしをしようという活動にも携わっておりまして、うちでは「ナポレオンのからあげ」という名前でやっておるんですけれども、今までにないような革命的なから揚げを作りたいという思いで「ナポレオンのからあげ」という名前をつけたんですが、一般的なから揚げは醤油ベースのものが多いと思うんですけども、うちはオリジナルスパイスを使って洋風のから揚げを作っております。イメージ的にケンタッキーフライドチキンみたいな感じなんですけれども、それを毎週末、県内各地で実演販売をして、揚げたてを販売するという形でやっております。今日は一日よろしくお願いします。
石川部長
ありがとうございます。
県からは、達増知事、それから、沿岸広域振興局の大久保副局長が出席させていただいております。本日は、大船渡選挙区選出の千葉盛議員、それから、陸前高田選挙区選出の佐々木茂光議員にお越しいただいております。ありがとうございます。
懇談
<テーマ>
気仙地域の特性を生かしたなりわいの再生
石川部長
それでは、皆様のお手元に、お菓子と飲み物を準備しておりますので、お召し上がりながら懇談いただければと思います。
まず、大久保副局長から、本日のお菓子と、それから懇談のテーマを御紹介いたしますので、どうぞお召し上がりながら聞いていただければと思います。お願いします。
大久保副局長
お菓子を紹介させていただきたいんですけれども、まず、どうぞ召し上がってください。
今日は二つほどお菓子を用意させていただいておりますけれども、ピンクの包装紙に入っている方が、陸前高田市を代表する焼き菓子と言われる、菅久菓子店の甘食です。菅久菓子店さんは明治29年からの創業なのですけれども、被災してしまいまして、平成25年に陸前高田未来商店街で仮設店舗として再開してございます。現在は、まちなかテラス内に新店舗を構えて、多くの人たちで賑わいを見せているところなのですけれども、こちらの甘食は、ピーカンナッツ入りの甘食を用意させていただきました。ピーカンナッツは、陸前高田市さん、東京大学と、株式会社サロンドロワイヤルと共同で産業化を目指している作物でございます。
二つ目のお菓子ですけれども、地域ブランドの北限のゆずを使用しました、北限のゆず塩まどれーぬです。このお菓子は、震災後に組織された北限のゆず研究会が商品開発を行いまして、地域の農業者、女性農業者さんからなる、あゆみ工房で作られたお菓子でございます。陸前高田には200年以上前からユズの木が生息してございますが、主に庭木として育てられて、その上、家庭での消費が主だったということなのですけれども、震災を契機に、ユズの特産品としての価値が見直されまして、北限のゆずは、今では新しい地域ブランドとして認知されるようになりました。今回御用意したマドレーヌは、北限のゆずに三陸野田産の天然塩を調和させました北限のゆず塩を使ったものでございます。こちらのお菓子を食べながら御懇談いただければと考えております。
続きまして、今回のテーマについて説明させていただきます。今回の県政懇談会の主要テーマは「復興」でございます。三陸のより良い復興の実現に向けて各方面で御活躍されてる皆様と意見交換をしたいと考えてございます。懇談の具体テーマにつきましては、「気仙地域の特性を生かしたなりわいの再生」とさせていただいております。震災から10年が経過しまして、復興の歩みはハード整備を中心に着実に進んでございます。ですが、復興を次のステージへ進めるためには、引き続き、持続的発展が可能ななりわいを再生することが重要だと考えてございます。さらに、気仙地域の将来を展望しまして、より良い復興を実現させるためには、地場に根差したなりわいを作り出して、地域を振興していく必要があると考え、このようなテーマとさせていただきました。
本日は皆様から積極的な御意見、御提言をいただきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
石川部長
それでは、お菓子を食べながら、お茶を飲みながら、懇談に入らせていただきたいと思います。ここからは本日のテーマ「気仙地域の特性を生かしたなりわいの再生」に沿って、現在の取組や課題、今後の方向、御自身の抱負、県への期待なども含めて、お話をいただければと思います。先ほどの順番で、種坂さんからお一人5分程度でお話をいただければと思います。それでは種坂さんよろしくお願いいたします。
種坂 奈保子
よろしくお願いします。私からは、四つほど分けて御説明したいなと思っています。
まず、うちの会社の事業の概要と、それから、私がやっているデザイナーという仕事をまちでやっていくに当たっての課題に感じていること、あとは、まちづくりという仕事について、それから、気仙での商いというものの未来についてお話させていただきたいと思っています。
この会社の事業についてなんですけれども、まだ新しい会社で、これといったすごい柱があるというものでは残念ながらないんですけれども、中心市街地の事業者さんをPRするために、まちなかマップとか、ホームページとか、あと、いろいろ冊子なんかも作ったり、広報物の作成、デジタルサイネージというものの運営などの広報関係の仕事をさせていただいてます。あとですね、市役所から指定管理をいただいて、まちの真ん中にある大きな公園の管理をしていて、そこで毎月、「ほんまるマルシェ」というマルシェのイベントを開催しています。
私のデザイナーという仕事についてというところなんですけれども、まちづくり会社というものを立ち上げてみて、やはり情報発信とか、イベント企画とか、デザインっていう仕事がお金になるというのはすごく難しいというのを改めて感じているところです。被災して大変な、借金を抱えて頑張ってる事業者さんの皆さんがお客様になってしまうので、正直、あまり高額な商売はできないなというところもありますし、そもそも、デザインとか広告というものにお金を払うという感覚がまだあまりないかなと感じているところです。そこは、もともと地域にある新聞社さんや印刷会社さんのやり方を参考にしつつ、信頼や実績を作っていくしかないなと感じています。その分、デザインというものがなかったからこそ、足りていないと思うところもたくさんあって、「これはもうちょっとデザインで整えたらすごく伝わるのにな」という勿体ない部分もたくさんあって、その分、やれることは多いなと感じています。
私自身も、もともと岩手に来てデザインをすると思っていなかったところがありまして、復興支援でやれることは何でもしようと思ってきたんですけれども、デザインできる人がいないということで、「デザインしてほしい」と求められることがすごく多かったので、これは多分、この先仕事になっていくんだろうなと思うんですけれども、そこの、お金になる、仕事になるということが求められるというところのバランスはまだまだこれからの努力が必要だなと思っています。やはり、気仙地域にはまだまだデザインや情報発信というものを育てていかないといけないなと感じているところです。
まちづくりという仕事に関してなんですけれども、「まちづくり会社って何なんですか」とよく聞かれてしまうんですけれども、ほかのまちづくり会社も、愛知県とか岐阜県とか滋賀県とか視察させていただいたんですけれども、大きいまちですと、事業者からの広告収入とかですね、あとは、市から条件の良い駐車場とかの指定管理を受けて、その分、利益をまちの事業に還元するというパターンが主にありました。どちらもですね、ちょっと陸前高田では難しいなと、すごすごと帰ってきたという感じなんですけれども、何かこれから事業の柱になるものを作らなければっていうことで、いろんなことに手を出して模索している最中というところです。私の願いとしましては、新しいまちが、市民にとって大切な場所になってほしいというのがありまして、どうしても震災前のまちが懐かしいって思っている方々もたくさんいらっしゃる中で、新しくまちを作って、そこをいかに皆さんの居場所にしていくかということに注力したいなと思っています。市民の皆さんが一人一人、とてもとても個性的な方がたくさんいらっしゃるんですけれども、皆さんのやりたいことがちゃんと見つかる場所というものをまちに作っていきたいなと思っていて、そんな取組をどうやって、できるだけ補助金に頼らずに収益化できるのかなということを日々悩みながらやっているところです。
これからの未来という意味のところなんですけれども、仕事という意味ではやはり、陸前高田の職業の選択肢はまだまだかなり少ないなと思います。私もたまにハローワークとか見るんですけれど、どうしても仕事がすごく偏っていて、例えば、デザインやITというものは、ほとんど求人としてないですし、あったとしても、都会と比べると、どうしてもお給料がすごく低くて満足に頂けないので、一人暮らしをするには家賃を払うので精一杯ということになってしまうので、そういう状況はあるかなと思います。「だったら、いきなり起業するしかない」という選択肢しかないというのも、やはりちょっと狭過ぎるかなと思いますので、私も1人の娘がいる親なんですけれども、これから子どもたちは大きくなって就職するというときに、もっとやりたい仕事が見つかるまちになっていないといけないし、そういうまちをつくっていきたいなという気持ちでいるんですけれども、なかなかちょっと、経営者目線みたいなものをみんなが持ってくというのもすごくハードルの高いことなので、どうやったら仕事の選択肢が増えていくかなというのは、とてもとてもとても気になるところです。
弊社としては、まだ会社として、このとおり、道を模索してるという状況なので、今回のようななりわいというものを語るのはすごく難しいんですけれども、まちを面白くするということが仕事になるということが目指しているところではありますので、その部分で、もし知事にも、何か素敵なアイディアとか御助言を頂けたらとても嬉しく思います。私からは以上です。
石川部長
ありがとうございました。それでは知事お願いします。
達増知事
種坂さんには、愛知県から、名古屋から岩手にやってきて、陸前高田に定着していただいて、ありがとうございます。私からも御礼を申し上げます。
東京とか名古屋とか、都会にあるような仕事が地方にないという話があるんですけれども、仕事がなくはないけれども、それだけで食べていけるくらいにまとまってないということが特徴だと思いますね。デザインの仕事というものもまさにそうで、デザインだけで食べていくほどの仕事はないけれど、しかし、デザインの仕事、そういうニーズはあることはあるということなんだと思います。地方暮らし論でいろいろ言われてるのは、複数のそういう仕事を組み合わせることで、家賃や生活費は安いので、食べていけるだけのバランスをとることができるんじゃないかということがありますけれども、一方、陸前高田市は、この土地を造成して、未利用地もたくさんありますので、まとまった企業や団体の誘致ということも視野に入れてやっていければと思います。
最近、話題になったのが、エルテスというサイバーセキュリティ会社で、東証マザーズ一部上場企業が、紫波町出身の人が若くして社長になっているからということもあるんですけれど、紫波町に本店を移すということで、1,000人規模の雇用を目指すという大きい話がありましたけれども、エルテスの菅原社長が言っていたのは、「コロナでリモートワークをやってみたらほぼ100%リモートにできて、東京に本社・本店を置いている理由がもうないということが分かった」ということでしたので、そういう形で、岩手にも、特に、沿岸には、復興の中で造成された新しい土地が、余裕が結構ありますので、そういうところに来てもらうことも目指していきたいと思います。
デザインは、岩手県では、長く、美術の一部門としてのデザインというものは、かなり盛んに行われていたと思うんですけれども、商業、工業デザイン、産業デザインですね、そういったものについては、最近ようやく全県的に、年に1回、IWATE DESIGN DAYが盛岡で開かれたりとか、そこでちゃんとお金を払って買うようなデザイン関連商品が売られたりとか、それはもう最近のことなんですけれども、産業技術短期大学校というものを県が持っていて、そこにもデザイン科があってですね、職業としてのデザイナー養成をやっていまして、デザインでどうやって稼いでいくかということは県としても大事なテーマでありますので、取り組んでいきたいと思います。ありがとうございます。
石川部長
それでは続きまして松田さんお願いします。
松田 俊一
よろしくお願いいたします。先ほどの紹介の続きになるんですが、自分はイチゴの生産を主にしております。ICTを使ってイチゴの生産をしております。
簡単に紹介しますと、自分は陸前高田生まれで、一度外に出て就職していたんですが、Uターンをして、農業をすることになりました。震災の大体1年くらい前に、家の都合で、父親がまだ船乗りで家を空ける機会が多くて、祖父母が弱ってきたときにちょっと母親だけでも大変そうだなと思いまして、戻ってくることになったんですが、半年くらい、ちょっと職を、震災前はあまりやりたい仕事がなくてですね、何か自分が探しながらできればいいなと思っていまして、ちょうど近くに産直ができたんですね。それが、今まで自己消費分であったものを母親が少しずつお金に換えるようになって、すごく面白そうだなと思ったのがきっかけでした。次の年に、陸前高田の農業の研修システムがありまして、そこで勉強して、まず、作物は何を選んだらいいかなというのを考えられたらいいなと思っていたんですけど、震災が来まして。陸前高田に帰ってきたときに、自分は消防団にまず入ってたんですね。活動として、人命救助という、要は人探し、遺体捜索だったんですね。そのときに、お年を召した方が出てくるのはすごく良かったなと思ってたんですけれど、自分よりも若い子たちが出てきたときに考えが変わりまして、「自分はこの地で何ができるんだろう」とか「自分たちがこの子たちの分まで強く生きなきゃいけないな」とすごく感じたんです。そこで、陸前高田を何とか盛り上げたりとか、正直、自分も、昔は何もないから、逆に、あるところに行こうと思ったんですけれど、ふと客観的に見れるようになったときに、「すごくハード面がそろっているんじゃないかな」と思ったんですね。それは、海もあるし、川もあるし、山もある。ただ、その代わり、「ソフトが全然ないな」とも思ってですね、自分は一人でシーカヤックとか自由に遊んではいるんですけれど、そこになかなか、遊び方を提案できる人とか、スキルを持っている人たちがまだまだ足りないなと思ったので、そこの部分でもすごくソフト作りをしたいと考えていますし、農業もですね、昔ながらの農業で、なんで新規が増えないんだろうなと思ったときに、やはり、良いイメージがないからだろうなと自分も思いました。
やはり、どうしても経験値であったり感覚であったりという、大事だと思うんですけれど、新規で経験がない子で、そこだけで食っていくのはすごく難しいなと思ってですね、そこで、数字である程度見れたらいいなということと、省力化がすごくできるということで、震災直後、キュウリをやっていたんですけれど、そこでキュウリでICTを使って栽培したときに、メリットしかないなと思ったので、それを使って今、イチゴを作っています。その反面、キュウリは陸前高田市とかJAおおふなととかがまだ当時一生懸命だったので、今でもですけれど、豊洲に行くんですね、キュウリは。競りにもかかるので、値段はすごく良いんですが、イチゴに関しては、当時、生産者は自分一人だけでした。そうなると、流通量もすごく少ないので、競りにもかかることなく、末端価格で市場に出る、と。そうなったときに、「ちょっとこれでは農業を続けていけないな」と思いました。そうなった場合にどうしたらいいだろうということを考えたときに、もう、自分で流通であったり販路開拓もしなくちゃいけないな、と。ただ、生産者である以上、すごく負担の部分も多いなと思いますし、あと、だんだんだんだん、震災後ですね、新規就農する子たち、移住してくる子たちと出会うようになってきたときに、推進作物、陸前高田市の場合、キュウリ、トマト、イチゴなんですが、それから外れた、例えば、ショウガをやっている菊地君であったりとか、リンゴを流通している、新しく団体としてやってる人たちであったりとか、あと、多品目に触れたいという人たちに出会うようなったときに、やはり、みんなここがネックになっていると思いました。なので、その部分を解決したいのと、農業を始めてから、一番は長く営農しなくちゃいけないということを、でなければ意味がないなと思ったので、もうとにかく、個人だけの声ではなく、団体を作ってですね、最近はコロナ関係でイベントもできなくなってきているので、地域の課題解決などについて、陸前高田市の議員の方々と懇談する場を作っていただいたりですね、あとは直接行政の方とも話してですね、それがお互いのマッチングになるというか問題解決になるんではないかなと思いまして、今そういう活動を続けております。
あとは、一番はやはり、自分がもともと畑と田んぼがある環境で生まれて、それが普通だと思っていたんですけれど、今それが普通じゃないんだなと思いました。やはりどうしても、食育であったりとか面白い農業をしたりとかしないと新規就農は増えないだろうと思ったので、この陸前高田が農村漁村地域だと自分は思っているので、メリットでもデメリットでもあるんですけれど、多分、特産品もこれといったものがないので、これから作れるんじゃないかなと思っていますので、この気仙地域の風土、気候は、冬もそんなに盛岡と比べて寒くないですし、雪も降らないので、大型の農業施設が作れたりですね、そういう可能性を感じているので、うまくいろいろ話を進めてですね、そういうふうに教えていけたらいいのかなと思っています。
陸前高田はどうしても所得の低い地域ではあるんですが、自由に仕事できる場所がなく、農業一本じゃなくてもいいと思っていますし、例えば、漁業をしながら農業をするとか、はたまた、林業をしながら農業をするでもいいと思いますし、仕事も、例えば、種坂さんのようにデザインをしながら半分農業をするとか、そういう地域だなと自分が感じているので、今までこれといった縛りがないような地域で、自由というか、ある程度、好き勝手と言うと言い方はちょっとあれなんですが、自分の形を見出せる地域なんじゃないかなと思っています。
陸前高田、岩手県は移住者もすごく多いと思うんですが、震災から10年経って、震災のビジネスから離れる時期に来ていると自分も感じているので、そうなったときに出入りがまた、出る方が多分多くなるので、そういうような提案ができたりとかですね、今後の陸前高田の発展のために、自分でも何ができるかと考えているところです。以上、ありがとうございました。
石川部長
ありがとうございました。では知事からお願いいたします。
達増知事
ありがとうございます。陸前高田市、この震災からの復興の中で、この岩手の中では、飛び抜けて温暖な地域でありますし、農業には実は向いているところで、特に商品価値の高い園芸農業にはすごい可能性があるという方向性で取り組んでいるところでありまして、若い人たちが、そこの分野でどんどん就農していくというのは、非常に良いことだと思います。そして、ある程度の量がないと市場で受け入れてくれないし、量があることと、産地のブランドといいますか、定評、キュウリみたいになってくるとばんばん市場で売れるんですけれども、一方、市場を経由せず、インターネット通販で直接売れればですね、それがうまくいけば、収入は結構頂けるということで、漁業の分野で、沿岸の魚を捕りに行く船の上で、その魚を捕るところを動画撮影して、その動画をインターネットで流しながら、捕ってきたものを「さあ、売ります。3,000円でどうですか」とやると、結構すぐ買い手がつくみたいなこととかがありますので、そういう情報通信技術を生かした経営というか売り方ができればいいんだと思います。イチゴは、まだ今はそういう感じで売れるというところまではいっていないところなんですか。
松田 俊一
いや、自分はですね、なるべく、昔だったら農協さんとかなんですけれど、そこからちょっとずつ離れていって、なるべく自分の手で。今年は特に、市場価格も多分、今までで一番低かったんですね。で、そういうピンチになったときに、次のチャンスを考えていけば、圧倒的にやっぱりEC系、産直ECサイトですね、ポケットマルシェだったり食べチョクだったりという方向に行きまして、そこに乗っかったかなと思っています。
あと、とにかく、地産地消もちょっと進んでいないなというところもあるので、なるべく市内、気仙地域のお菓子屋さんだったり、あと、まだ岩手県、例えば、岩手県の中央でいえば盛岡であったりという可能性もあるので、そこの販路を作っていきたいなとすごく思っています。
達増知事
地元でとれたイチゴをそのまま地元でイチゴパフェにして出して、結構高い値段ですごく売れるなんていう例もありますからね。そういう、消費者の口に入る直前まで、加工も含めて高付加価値を付けられればいいんだと思います。ありがとうございます。
石川部長
それでは中野さんお願いします。
中野 貴之
よろしくお願いいたします。先ほどの自己紹介のところでもお話しましたけれども、私、6月までは、碁石海岸インフォメーションセンターで、三陸復興国立公園の一部である碁石海岸の魅力の発信など、あと、いろいろな花などの自然の素晴らしさというものを、訪れるお客さんとお話したりとか御紹介したりとかというふうな活動を行っておりました。で、そういった活動の中でですね、私も碁石海岸で働くようになってから、一、二年のところで「みちのく潮風トレイルっていうものが今度できるんだよ」という話を環境省さんの方からされまして、最初は何のことやらと思っていましたが、山のすごく草の深いところに連れていかれて、「ここを歩くんだ」と言われたときに、随分大変な事業にかかっちゃったなと思ったところがみちのく潮風トレイルとの出会いです。今日は、みちのく潮風トレイルについての活動をちょっと御紹介させていただきたいと思うんですけれども、皆さん御承知の方も多いと思うんですけれども、みちのく潮風トレイルっていうのは、北は青森の八戸市から南は福島県の相馬市まで沿岸を歩く、およそ1,025キロの歩く道のことなんですけれども、私は最初知らなかったんですけれど、海外でもいろいろとそういったトレイルのルートがありまして、その関係か、海外のガイドブックであるロンリープラネットとか、あと、自然雑誌のナショナルジオグラフィックとかに取り上げられて、「2020年の世界で最もエキサイティングな旅の目的地」として東北地方が紹介されて、その中でも、みちのく潮風トレイルについて多くのことが語られるような感じで、すごく注目度が上がっているものでございます。本来であれば、多くのお客さんが、日本、海外含めて、多くのお客さんがみちのく潮風トレイルを訪れて歩いていただくはずだったんですけれども、ちょっと、昨今、コロナの関係で自粛ムードもあり、今のところは落ち着いた感じとなっております。
こういったトレイルでの活動なんですけれども、先ほどちょっとお話したとおり、最初、道なき道みたいなところを整備していくような形だったんですけれども、やはり、皆さんが少しずつ少しずつ歩いてくださるような形で道にはなってきているんですけれども、ただやはり、夏の草が繁茂する時期とか、そういったときにはすごく生い茂ってしまうので、そういったところでの整備活動を、環境省とか地元のボランティアの方とかと一緒にしたり、あと、みちのく潮風トレイルっていうものを知っていただくために、インフォメーションセンターでトレイルを活用したイベントを行ったりしております。
一番最初にトレイルのイベントを行ったとき、正直、「『歩く』という楽しみで、お客さんを集められるのだろうか」という気持ちでイベントを行ったんですけれども、思いの外と言ったらちょっとあれなんですが、多くの方にイベントに来ていただいて、結構こういった形で歩くということに興味を持たれてる方もいるんだというところを知って、自分もこうやっていろいろな自然を歩くところで、そういった魅力を分かるようになってきたっていうところで、私もそういっただんだんとトレイルの方に心酔していったんですけれども、碁石海岸インフォメーションセンターが、みちのく潮風トレイルのサテライト施設ということで、トレイルの情報発信だったり、あと、ボランティアを集めての整備活動などをいろいろと行って、トレイルを盛り上げていくようなところなんですけれども、そういったところで、皆さんにトレイルを紹介する際、いろいろやってはいるんですけれども、碁石海岸インフォメーションセンターというところは、管轄区間は、大槌町から宮城県気仙沼市まで広範囲にわたるところなんですけれども、本来であれば、そこの全区間でいろいろなイベントとかをできればいいんですけれども、私の所属しているのは大船渡市観光物産協会ということで、結局、大船渡市でのイベント開催みたいな形でしか行えないので、ほかのところも魅力的なルートですので、御紹介したいと思ったりもするんですけれども、なかなかそういったところでトレイルを自分が思ったような形ではちょっと広められない部分もあったりしますので、そこら辺がちょっと、取り組んでいる中での課題になっておりました。
ただ、やはりトレイルというものが、私は素晴らしいものだと思っておりまして、地元の方々だったりとか、ハイカーを支える地域の人たち、トレイルエンジェルと呼ばれるような人達なんですけれども、そういった人たちが、そういった存在が増えていけば、みちのく潮風トレイルは、たくさんハイカーが利用する、四国のお遍路さんだったりとか、あと、熊野古道のような観光資源にもなれるのではないかなと思っております。
また、みちのく潮風トレイルは、東日本大震災で被災した地域を歩く道でもあります。震災の記憶を語り継ぐとともに、地域に暮らす人々と地域を訪れる人々との交流や、その地域の美しい自然や文化、歴史、そういったものを再確認させてくれる道だと思いますので、ぜひともこのみちのく潮風トレイルを盛り上げて、世界に誇れるナショナルトレイルとして、皆さんに利用していただけるようになればいいのかなと思い、日々活動しております。
今後は、今は現場からはちょっと離れてしまったんですけれども、みちのく潮風トレイルを活用して、大船渡にお客さんが来てもらえるような仕組みができればいいのかなと思っております。これからそういった活動をしていきたいと考えております。以上です。
石川部長
ありがとうございました。知事からお願いします。
達増知事
ありがとうございます。私はアメリカにあるアパラチアントレイル、東部のアパラチア山脈沿いのトレイルの一部を歩いたことありますけれども、欧米の人達の中には、ああいうものが本当に大好きな人たちがいて、ナショナルジオグラフィックを定期購読していたり、テレビの衛星とかケーブルでもナショナルジオグラフィックチャンネルというものがあるくらいで、そういう愛好家がいますよね。今、海外からの移動が難しいので、そういう人達を今すぐということができないのは残念なんですけれども、世界中のそういう愛好家に、みちのく潮風トレイルは非常に愛される可能性があるのだと思います。
日本人にも非常に良い趣味で、健康、心と体の健康に良いので、やはり広めていきたいところで、歩くこと自体の楽しみとか、あと、欧米だと、マインドフルネスっていう瞑想の一種なんですけれど、宗教と関係なく、歩きながらでもできるので、マインドフルネスと歩くということを組み合わせるのも良いと思いますし、似たようなやつでは、普代村が海岸でヨガをやるということに力を入れていますけれど、ヨガをやってもいいんだと思います。
あと、東京とか都会で、確かチェアリングって言うんじゃなかったかな、椅子、チェア、チェアリング、ちっちゃい持ち運べる椅子を持って散歩し、良い感じのところに椅子を置いて、そこでお茶を飲んだり何かを食べたりするという趣味が、東京の方にここ最近出てきたりという話を聞きますけれども、そういうことも、大自然の中でより気持ちよくできるんだと思います。
いろんな楽しみ方がトレイルではできると思っていまして、岩手はもう、海岸、沿岸地方全体が国立公園であり、トレイルであり、さらにジオパークにもなっているということで、多くの人に多様な楽しみをしてもらえるように、県としても頑張っていきたいと思います。
また、コロナ禍のレジャーとしては、感染リスクはすごく低い方のレジャーでありますから、密にならず、感染リスクの低いレジャーとして、全国の皆さんに来てもらうことも目指したいと思います。ありがとうございました。
石川部長
それでは続きまして佐藤瑠奈さんお願いします。
佐藤 瑠奈
私のこれまでの取組についてちょっとお話させていただきたいと思います。もともと大船渡市には、平成28年5月に大船渡テレワークセンターという施設が開設して、弊社はその運営を担ってきました。その中には、首都圏に本社がある富士ソフト株式会社といったIT企業が入っていたり、そこで小中高生のプログラミング教育を実施したり、高齢者の方を対象にLINEの活用方法とか、市民の方向けのスマホ教室を行ったり、先ほど自己紹介の時にお話した、IT活用塾という市内の社員の方向けのIT人材育成に取り組んできました。
新型コロナウイルスが今回感染拡大したことによって、今までITというものにちょっと後ろ向きだった、アレルギーを持たれていたような方々、企業の方々も、前向きにIT化の検討に入ってくださったりとか、徐々にここ1年のところで状況の変化というものを感じています。そういう活用塾とかをやっていく中で、ほとんど皆さん前向きに取り組んでくださってはいるんですが、そこの要望が高まるのと同じぐらい、そういうツールを教える側の不足も一つ課題として感じています。
もともと、私が所属する地域活性化総合研究所が設立したところの大きな目的としては、気仙地域の人口流出に歯止めをかけるというところが一番大きい点です。これは、高校卒業時に、気仙地域の卒業生のだいたい9割の方が、市外、首都圏の方とかに流出するという現状を打開しなきゃいけないというところをテーマにしています。これは、気仙地域の高校一年生と二年生、保護者の方を対象に、過去3回アンケートをとった結果です。第1回目のアンケートは、私も高校2年生のときに回答しました。当時、「学びたいことが学べて働きたい仕事につけたら、大船渡に残りますか」という質問があったんですけれども、当時、進路選択が目前だったというのもあって、すごく正直なところを申し上げると、「そんなの無理だ」と友達とも話していたんですけれども、大人になって上京して、地元にいたいけれども地元で学べたいことが学べる場所がない、働きたい仕事に就けないという感覚を持った子たちも少なからず同じようにいるんじゃないかということは考えていて、進路の選択については、震災当時が中学校二年生で、その次の年は職場体験が予定されていたんですけれども、実施できる状況ではなくて、そういうキャリア教育を受ける機会もあまりない中、どんどん大人になって、進路選択が目前に迫っていて、ただ目の前のことの中から進路を選んでいくという印象がすごく強くて、子どもたちにとって、キャリア教育がどれだけ大事なのかというところも、今までの経験の中ですごく実感しています。なので、今回、ITユースチームの立ち上げに携わる中で、これは首都圏に本社を持っている大手のIT企業の方々も参加する意向を示してくださっていて、地方にいながらテレワークをして、現地で採用してもらうっていう新しいキャリア制度っていうのを一緒に構築していこうとしています。なので、昔のように、地元に残りたいけれども出なきゃいけないという感覚を持った子たちも、わざわざ地元を離れなくても、そこにいながら、自分が学びたいことがITユースチームの中で学べて、働きたいと思ったIT関係のお仕事につけるというような、この流れを今できるような状態にしていきたいと考えています。
もう一つ、弊社としては、フードロスにも最近ちょっと取り組み始めています。気仙地域は、食品加工の企業さんが多かったりとか、もちろん、農業とか漁業とかをやられている方が多いんですけれども、例えば、農家、松田さんももしかすると実感されているかもしれないんですが、農家さんの高齢化が進んでいると思うので、収穫ができなくなっていたり、また、ものの形が悪いという理由で、一般の流通経路になかなかものが出せないはじかれ品が多く出ているということで、それらを加工して、新しく価値があるものに変えるための商品化にも取り組んでいます。一つちょっと例を挙げると、去年はピーマン農家さんと協力させていただいて、その農家さんだと、生産したピーマンの半分が廃棄、はじかれ品になっていたということだったんですけども、そのピーマンを安く買わせていただいて、カットして乾燥させたりとか、あとは焙煎してお茶にしたり、あとはパウダーにしたりして、商品化をして、弊社が東京の高円寺にも三陸のアンテナショップを運営しているので、そちらでテストマーケティングをさせていただいたりしました。今後は、こういったピーマンのカットとか、そういう作業を、福祉事業所の方と一緒に連携してできないかというような検討も進めています。
今年の10月には、こういうフードロスに関する商品、意識を高めながらも、イベントか何かできないかなということで、朝市を企画しています。例えば今、週末、大船渡に宿泊すると、日曜日以降、朝出かけられるイベントがあまりないという状況の中で、大船渡にも観光客の方が増えてほしいなという思いもあって、日曜日の朝に楽しめるようなイベントということで朝市を企画していて、イメージとしては別の県になっちゃうんですけど、青森県の館鼻岸壁さん、八戸の方でやられている朝市をイメージしています。
いろいろ地域に課題があると思うんですけども、一つ一つ私たちができるところを拾い上げていきながら、みんなでアイディアを出してやっていきたいなと考えていて、民間企業だけでできることじゃないところもあると思うんですけれど、民間企業だからこそできるところを進めていきながら、行政の皆さんとかとも連携して、いろいろ、ITユースチームとか、このフードロスへの取組を今後も続けていきたいなと思っております。ありがとうございました。
石川部長
ありがとうございます。それでは知事からお願いします。
達増知事
子どもたちが、選択肢がよく分からないまま、「地元になんにもない」とか「大学進学は無理だろう」とか結論を出して、狭い範囲の中で選択進路を選択するというのは、非常に残念なことでありますので、いろいろ分かった上で選択してもらうように、県も、岩手県内のいろんな企業を紹介したり、また、背景になっている岩手の経済情勢を説明するような、いわてダ・ヴィンチという雑誌を発行したりもしているんですけれども、あとは、人口減少で、大学に入りたいと希望すればどこかの大学には定員上必ず入れるような時代になってきているところもありまして、例えば、東京の大学も、黙っているとどんどん入ってくる生徒が減っちゃいますから、生徒にたくさん入ってきてもらうために、Uターン就職の支援にもどんどん力を入れていますね。例えば、岩手県は、専修大学に入る人数が結構多いので、専修大学に岩手の企業情報とか、岩手の企業合同説明会情報とか、それから、いわてダ・ヴィンチがちゃんと岩手出身の学生の手に届くようにするとか、そういうことをお願いしてやってもらったりしていまして、そういうのは大学だけではなく、東京、関東の、そうですね、60くらいの大学にそういうことをお願いしています。
やがて地元に戻るということも含めて、地元の外の大学に入るための仕組みづくりはできると思っていまして、岩手県立大学にもどんどん入ってほしいというところもありますけれども、いろんな選択肢が見えるようにしていくというふうにしていきたいと思います。
そして、フードロスとかはじかれ品の活用とかということは、非常に大事なところだと思います。農業の盛んな岩手ですから、それだけそういった類の、普通に市場に出ないようなものもいっぱいありますので、それを活用すると、非常に付加価値が出て、地元で食べていけるということにつながっていきますので、ぜひぜひお願いしたいと思いますね。東京、高円寺で、都会の方にそういうものを食べる人、買ってくれる人が一定数確保されると、なお安定していきますので、農業とか食品の分野でも、作ったものがちゃんと買ってもらえるような仕組みを都会の間に作っていくことは非常に大事で、県もそういうところをどんどん応援していきたいと思いました。ありがとうございます。
石川部長
それでは続きまして菊池さんお願いします。
菊池 顕
よろしくお願いします。自己紹介のときに「ナポレオンのからあげ」の話をちょっとさせていただいたんですけれども、去年、住田町で行った「からあげ大作戦」ですね、かなり好評を頂いていまして、遠方からも、住田町外からいろんなお客様が買いに来られて、大成功したんですけれども、それに携わって、個人の事業主というか小さい事業者だとなかなか広告宣伝にお金を使えなかったりするので、そこを、行政のお力だったりとか補助金の力だったりとかで、新聞の折り込みチラシをカラーで入れていただいたりとか、あと、新聞広告と、あとは雑誌だとか、そういったことを精力的にやっていただいて、その結果、お客様に認知していただいて、「住田町にこういうブランドのおいしい鶏肉があるんだ」とか、今、住田町では12店舗加盟店があるんですけれども、「それぞれのお店でどういう違いがあるのか」ということで、たくさんのお客様に来ていただいて、すごく良かったなと感じております。
例えば、陸前高田市で、小さな飲食店さんもあると思うんですけれども、そこで一生懸命おいしいから揚げを作ったとしても、町外の人からすると全然知らない話で、知るきっかけもない話だと思うんですよね。そこを、行政の力だとかをお借りして、良い括りというか提案の仕方をしていただくと、すごく効果があるなと実感しました。分かりやすく言うと、「アメトーーク!」というテレビ番組の「○○芸人」みたいなものがあると思うんですけれども、例えば、一人の芸人さんが「バイク好きです」と言ってもそんなに番組は盛り上がらないと思うんですけれど、「バイク大好き芸人」となると、バイクに興味ない人も見てくれたりとか、それですごく番組が盛り上がったりするということがあると思うので、括り方だとか提案の仕方だとかを工夫して、個人事業主が出せないような予算で広告を打って認知していただいて、継続的な事業にしていくということがすごく大切だなと感じました。
たまたま今、から揚げブームで盛り上がっていますけれども、例えば、岩手県の場合で言うと、いわて特産品コンクールとかありますけれども、あれもすごく素晴らしい企画だなと思うんですけれども、今、コロナ禍で飲食店さんがかなり苦戦している状態なので、そういう飲食店さん向けのいわて特産品コンクールみたいなものがあると、事業者さんが助かるのかなと感じています。具体的に言うと、から揚げ屋さんの店の前に、何か「から揚げグランプリ金賞受賞」とかよくあるんですけれど、あれって結局、お金を出せば大体取れるみたいな仕組みだったりするので、それが例えば、今日は達増知事がいらっしゃるのであれですけれど、「達増知事賞」みたいなものがあったり、何々部門とか、そういう「から揚げグランプリ」みたいなものがあった方がより説得力もありますし、持続性も生まれてくるのかなと感じております。ざっくりとですけれど以上です。
石川部長
ありがとうございました。知事、お願いします。
達増知事
から揚げは非常に良いところに目をつけたと思います。住田町の鶏、ブロイラーとか、鶏肉産業は昔からあるわけですけれども、ついにブレイクしたかなという感じだと思います。「ナポレオンのからあげ」というのは非常にグッドアイディアですね。から揚げは今どんどんいろんな新しいものが出て、競われてるんですけれども、その中で勝ち残っていくから揚げと期待します。
「アメトーーク!」風の「○○芸人」みたいな感じの情報発信とか、あとは、コンテスト、コンクールで「○○賞受賞」というような、消費サイドと言うんですかね、評価する側と一緒になって、情報発信ということだと思うんですね。それは非常に大事なんだと思います。県としても、ぜひそういう、消費サイドと生産サイドが一緒になって情報発信するような仕掛けをいろいろ工夫していきたいと思います。ありがとうございます。
石川部長
ありがとうございました。皆様から一通りテーマに沿ったお話を伺いました。ここからは自由に御発言いただきたいと思います。先ほど言い足りなかったこと、それから、ほかの参加者の皆様のお話を聞いて考えられたこと、懇談全体を通しての御感想ですとか、あるいは、懇談テーマに関わらない御意見でも結構です。これだけ言っておきたいというようなものがございましたら、ぜひお願いしたいと思います。種坂さん、いかがでしょうか。
知事が本当にいろんなことを御存知なので、その都度話されることにちょっと、流石だなと思って聞いていたんですけれども、皆さんのやられている活動が本当に私も勉強になって、やはり業種が違えば見方が違うので、こういう機会があって、「そういう仕事はこういう苦悩があって」ということを改めて聞くのは本当にいいなと思いました。農業の難しさだったり観光の難しさだったりというものを、何か知った気になっちゃっていたなと思って、全然業種が違うんですけれど、まちづくりとかデザインというものは、関わる部分もすごくあるので、うちもちょっと今、お土産品を、「陸前高田のまちなかに観光客が来る理由が今ない」ということをすごく言われていまして、震災復興の、全くなくなったまちから嵩上げ13メートルとか土を盛って新しくまちをつくるってなかなかないことだと思うので、そこに価値を感じて、視察に来てくださる方もいらっしゃるんですけど、道の駅とか高田松原奇跡の一本松にたくさん人が来て、その人たちがまちに来る動機づけがまだちょっと弱いかなという話をすごくまちの方ともしていて、その中でお土産品とかもなかなかなくて、「次にあれを食べに行こう」とかですね、「この人に会いに行こう」みたいな、何か目玉みたいなのをどんどん際立たせていかないといけないけれど、どうしたらいいんだろうみたいな話をいつもしているので、今日、いろんな話を聞きながら私の頭の中でも、何かグズグズしている部分があってですね、何か、ちょっと具体的な話ではないんですけれども、今持ってる課題と、皆さんから聞いた話とかも良い刺激になったなあと思ったところです。感想です。
石川部長
ありがとうございます。 松田さんはいかがですか。
松田 俊一
自分はですね、岩手県のイベントでもすごく大好きなイベントがありまして、三陸国際ガストロノミー会議に去年、一昨年と参加しているんですけれど、すごくあれが刺激的で、日本でも誇れるようなイベントだと実感しております。
すごく考えさせられたのが、今、岩手県、陸前高田市、気仙地域もなんですが、眠っているものがすごく多いなと思っていました。新しく作るのもですし、やはり、眠っていて磨かれていないものがすごく多いんだなというのが実感でした。
なので、自分もいずれは食材として選ばれるようになりたいなと思っていますし、ぜひああいうような素敵なイベントをまたお願いしたいなという、希望を込めてなんですけれど、思っているところであります。
ああいう、世界中の料理人の方々が参加してですね、そして、全国でも類を見ないようなイベントが岩手県でもあるというのはすごく誇らしいので、ぜひそういう企画も、こういう状況下ではあるんですが、お願いしたいところでもあります。
石川部長
ありがとうございます。中野さんは何か御感想はありますか。
中野 貴之
知事が、トレイルの話のところで、アパラチアントレイルを一部でも歩いているっていうことを聞きまして、すごいな、と。そういった情報をいろいろ発信していただければ、もっともっと岩手県のトレイルも熱を帯びてくるのかなと思っておりますので、そこら辺もちょっとよろしくお願いしたいと思います。
石川部長
ありがとうございました。佐藤さんはいかがでしょうか。
佐藤 瑠奈
今日、皆さんのいろんなお話を伺って、やはり、いろんな業種の方とお話させていただく機会というのはあまりないので、すごくありがたいなと私も種坂さんと同じように思いました。
先ほどのお話の中で、知事が、県立大とか専修大学に大学進学者の方が結構行ってくれたというお話をされていたんですけれども、例えば、高卒の新卒での就職に関してはどうなのかなとちょっと思ったんですけれども、今回の私の取組、ITユースも、小中高の一連の流れで、子どもたちにITの教育をさせていただいて、高校卒業の時点でもお金を稼げるような状態にできたらと考えていたんですけども、そこの部分はどうなのかなとちょっとお伺いしたいです。
達増知事
高校卒業での就職ということについては、岩手県は、もう、全国有数に実は力を入れているところがありまして、というのも、大学進学率が低いですからね、割合として、高校卒業して就職という人が多いので、また、県外に出ちゃう人が結構多いもんですから、力を入れて、震災前、10年くらい前には60%くらいしか岩手県内就職していなかったんですけれど、最近はもう70%以上にまでいっているんですが、ただ、北陸の方では90%くらいが地元就職していますんで。
岩手県は、昔東北本線、今新幹線、東京に近いというか「就職イコール上京」みたいなイメージが、1960年代、前のオリンピックのあたりからあって、年配の世代ほど「就職イコール上京」みたいなイメージを持っていたりするんですけれど、それをいかに打破するかがテーマだと思っていまして、就職の分野についても、岩手ファースト、まず県内の企業や、産業状況を冒頭、高校生の皆さんにちゃんと分かってもらった上で選択してもらうということに力を入れています。トヨタ東日本とか東芝メモリ、名前を変えてキオクシアとか、世界有数の工場もありますので、そういうところで即戦力で働ける高校卒業者ということで、工業高校では、自動車とか半導体関係ではかなりレベルの高いコースを設けたりもしています。
思えば、小中学生ぐらいからプログラミングとか機械いじりみたいなところから、そういう分野にどんどんこう慣れ親しんでもらえるよう、自動車産業もどんどん電子化していますので、プログラミングとか、そういうITの要素はもう製造業に不可欠ですし、ITビジネスなら、まさにそのものですから、小さいころからそういうものに慣れ親しむような場をどんどん作っていきたいと思います。
石川部長
ありがとうございました。最後に菊池さんからも一言お願いします。
菊池 顕
今日はいろいろ勉強になる話を聞けて良かったです。ありがとうございます。最後に、住田町のおいしいから揚げを、ぜひ皆さん食べに来ていただけると嬉しいです。
石川部長
ありがとうございました。
知事所感
石川部長
それでは最後に知事からお願いしたいと思います。
達増知事
そういえば、フランスは鶏を国のシンボルにしているようなところがあって、パリの次のオリンピックのシンボルマークかキャラクターに鶏が使われていることを思い出しましたが、非常に住田のチキンのイメージアップとしてグッドアイディアだと思います。
今日、この異業種で集まって、また同じメンバーで集まるという予定は今はないんですけれども、今日のこれが終わりではないと思っておりますので、いろいろ仕事上でまた、私も含めてここにいる人たちがこの一緒に仕事をしたりすることはこれからあるんじゃないかなと期待しますし、あとは、何かあれば、どんどん県の方にも、こう言っていただいてですね、県としても、地域振興、産業振興、それも、やはり、いろいろやろうとしてる人、人間が中心になっていかなければならないこれからの時代だと思いますので、そういう人たちを応援し、アイディアが実現していくようにしていきたいと思いますので、これからもよろしくお願いいたします。ありがとうございます。
閉会
石川部長
本日は、皆様貴重なお話しを頂きましてありがとうございました。以上をもちまして、県政懇談会を終了いたします。
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